ジャニーズ・ボディシェイミング

ジャニーズのオタクをしていた頃の自分を振り返る。

胸きゅんコーナーが苦手だった。家に帰ったらご飯を作って待っている彼女。バレンタインデーに彼女に一言。思えばそこに彼氏が登場したことも、恋愛関係では無い友人が登場したしたことも、ただの一度も無かった。

私はそのころフェミニズムも、家父長制も、日本の政治のことも、マイノリティのことも、知らなかった。その頃の私は小学5年生〜中学3年生。私が何も知らなかった責任は私にもあるけど、まだ環境にもあると言える年齢だと思う。スマホは制限されていて、私の行動範囲は狭く、話す友達も小学生から中学生で変化は無かった。それでも、何故か嫌だった。胸きゅんコーナーが。

その頃の私は「少クラ」も「まいジャニ」も毎週必ず見ていたし、Myojoやpotatoといった所謂J誌・ドル誌と言われる雑誌も結構な頻度で買っていた。それらの雑誌には「好きな女の子のタイプは?」「好きな女の子の髪型は?」「好きな女の子の服装は?」といった"女の子"のみが好きになる対象であると断定し、その外見や求める性質について好みを問う質問がたくさんあった。数え切れないほど。今がどうかは買ってないから知らないけど、私が見ていた時代は確実にあった。聞くなら女の子とか異性とか言わず「どういう人間が好きですか?」とか聞けよな。

先述した胸きゅんコーナーも、ほぼ全てのものが「彼女」に向けたものだった。もちろん、ジャニーズを好きな層にシスヘテロの女性が多いのだと推測はできる。しかし、逆を言えばシスヘテロ女性以外は"想定されていない"、"いないものとされる"客であると、宣言されているような気持ちになる。今でこそ私は自分のことをAスペクトラムの人間だと自認しているから、あの頃の私が嫌悪感を抱いたこともわかる。私は踏まれていて、どれほど彼らや彼らの音楽が好きでも想定されていない客であると、胸きゅんコーナーの度に突きつけられていた。

関西ジャニーズJrの持ち番組である「まいど!ジャーニー」略して「まいジャニ」には、「男らしさ」という大人気(?)胸きゅん企画がある。元宝塚男役である大和悠河さんを招いて、「男らしさ」を勉強するために、メンバーそれぞれが考えてきた女性を対象とした胸きゅん寸劇を行い添削してもらうという企画だ。

ツッコミどころしかない。まずタイトル「男らしさ」て。無いやろ。ゲストである大和悠河さんが元宝塚男役であることを考えるとここでいう「男らしさ」とは、宝塚で男役をやる上で意識する仕草とか姿勢とかそういうことであって、ホモソーシャルな男らしさとか、女性に対して男性はこうあるべきとかではないと思うのよね。発端は。でも結局この「男らしさ」という企画には、相手を女の子と限定して胸きゅんセリフを言わせるという意味合いも含まれていて、より「男らしい」ところを目指すという趣旨にとれるような仕上がりになってしまっている。

ジャニーズJrを好きな世代の中には、まだまだ価値観創造中の小中学生はざらにいて、価値観とか社会基準って日常の小さいことから作られる。毎週見るテレビ番組も、絶対にその価値観を作るのに一役買っているはず。その役割について考えて欲しいよ。

 

この時に胸をはせるのはオタク側だけでなく、胸きゅんコーナーをやるアイドル側にも。名の知れたジャニーズアイドルで、胸きゅんコーナーを通らずに行く人ってそうそういないと思う。もちろんアイドル達の中には、胸きゅんコーナーが苦手な人はいた。それでも「胸きゅんが下手なアイドル」は一人前とは認められにくく、正統派でないとされる風潮があったように感じる。

そこで、考えてしまう。ジャニーズのアイドルって5人とか10人とかじゃない。ジュニアまで含めたら何百人何千人といるような超大所帯。その中に、ヘテロじゃない人だっている(いた)かもしれないなって。ゲイのアイドルも、バイセクシャルのアイドルも、Aro/Aceのアイドルもいたって全然おかしくない。それをファンや広く一般に言うかどうかは別として。(別に言わなくてもいいし。)シスヘテロ男性のアイドルの自分が、シスヘテロ女性のファンに向けて言うメッセージが何度も何度も要求されることに違和感を覚えた人はいなかったのか。思いを馳せてしまう。もしいたのだとしたら、あの胸きゅんコーナーは自分のアイデンティティを否定し続け、異性愛規範やジェンダーロールを押しつける側に自分がなるという、とても辛いことだと思う。オタク一人一人にアイデンティティや違った背景があるように、アイドル一人一人にも当然それは存在する。私たちは彼らが眩しくて、輝いているためか、それを忘れてしまいそうになることがありそうだ。それでも、忘れそうになった度に考え、思い出したいよね。

 

 

あと、ボディポジティブの話で思い出したこと。私には、いとこが2人いる。幼稚園児と小一。正月とか夏休みとかに年2回か3回くらい会うんだけど、いとこ2人の親(私の叔父・叔母)からのいとこ2人に対するボディシェイミングがすごい。

「(上の子)はぽちゃぽちゃやでな〜笑」「(下の子)は上に伸びるけど(上の子)は横にばっかいくであかんわ笑」

笑わせる気で言ってるんだと思う。うちの子馬鹿やから〜みたいな、謙遜?のつもりなのかな。

まっっっっっっっじで意味わからん。黙れよ。としか思わない。いつも、1ミリも笑わない。

まず、人の体型について意見することの加害性を考えてない。子どもは小さいから分からないと思ってるのかな?逆に子どもが本心からの言葉じゃないって分かると思って言ってんのかな?そういう身近な人からの体型に関する言葉が摂食障害過食症を引き起こすことがあって、逆に他の人にもボディシェイミングをするようになると思うんだよ。それに、「太ってるから」「痩せてるから」自分に自信が持てなくなって、体型のことについて苦しめられる人生を子どもに送らせることになるかもしれない。

しかも子どもの人生上多くの時間を近くで共に過ごす大人が言うなんて。絶対だめだね。

 

もう一個嫌なのは、これを「笑える話」「自虐ネタ」として言ってくるところ。

これって、"子どもが他人である"感覚があったらやらないと思うんだよね。子どもが自分の所有物みたいな感覚が薄くともあるから"自虐"として言うのかなと思うところがある。

 

あと、子どもはちっちゃいから何言ってるか分かんないだろうって思ってるのかもしれないけど、そういうのって覚えてるから!!分かるから!!後々効いてくるから!!悪い方で!!!舐めないで!!!!!!!!!!!!!!!

 

私は(上の子)がぽちゃぽちゃやから〜みたいなことを言われた時は

「うるさいね!ぽちゃぽちゃでもいいので!!全然かわいいですし!!なんですか!!!」

「黙るんや!!まだ小さいんやから上にもまだまだ伸びるし、私はありのままの(上の子)が好きだよ!!」

いとこの母親には「絶対言わん方が良いでそんなこと。健康に害があるほどのことやったら言わなあかんかもしれんけど、そうでもないんやったら言わんといて。この子自身を肯定するべきやん。」

などと反論しております。ただ、このいとこ家族は父方の実家で父方の祖父母と2世帯暮らしだし、家族全体にジェンダーロールの押しつけが結構強くて女はこう男はこうっていう考えが割とある+前述の母親は父方と血縁関係にない(嫁入りしてきたってことです 嫁って書きたくなかったのであえて)から発言権が弱く父親に押されがちって言うことがある。(だから私は味方してあげたい)

 

次会った時にはボディシェイミングやボディポジティブについてしっかり大人と話そう。なんかもう資料まとめてプレゼンするくらいの気持ちで1回話してみた方がいい気がする。子どもにとって良い大人でありたいよ。